小説家食堂

小説、エッセイに登場するあの料理を食べる

胡麻豆腐(水上勉『土を喰う日々 ー わが精進の十二カ月 ー 』)

どういうわけか、和尚さんは、ぼくに胡麻の皮をむけ、といった。そんなことをいわれてあんな小さな粒の皮などむけるものかと先ずびっくりしたが、目の前で和尚さんがやってみせる胡麻の皮むきに参ってしまった。(水上勉『土を喰う日々 ー わが精進の十二カ月 ー 』の「八月の章」より)

胡麻豆腐(水上勉『土を喰う日々 ー わが精進の十二カ月 ー 』)

黒胡麻の豆腐。キューブ型にカットすると、箸が葛の弾力に狼狽することなく一口できれいに食べやすく、箸休めにもなります。

 

執筆の仕事場である軽井沢の敷地内で収穫した野菜や山菜を食べる日々をつづった水上勉(1919-2004)のエッセイから。1月から12月まで、それぞれの旬を味で感じるいわば料理書で、作り方も丁寧に書かれています。

スーパーマーケットでも最近は朝獲れ野菜が売っていたりしますが、調理法はどうでしょうか。水上さんのは少し次元が違います。
この「八月の章」のように、胡麻の皮を剥くことから下ごしらえがはじまったりと、人の生活の知恵や、獲れる作物への感謝に根ざした滋味と工夫にあふれた素朴な料理ばかりなのです。
子供の頃、水上さんは寺で小僧をしていらしたので、そこで学んだ精進料理のエッセンスがちりばめられているというわけです。


「八月の章」は豆腐が紹介されています。奴豆腐、湯やっこ、胡麻豆腐、落花生豆腐、擬製豆腐、淡雪豆腐など。
読みながら、風味や歯ざわりが想像され、つばがたまるほどおいしそうな料理の数々ですが、私は修業が足りず真似できないので買ってきました。歳を取ってからの楽しみに、いつか作ってみたいです。ご興味のある方はぜひ本を手にとられてみてください。

胡麻豆腐(水上勉『土を喰う日々 ー わが精進の十二カ月 ー 』)

おおまかですが、胡麻の皮むき→すりつぶす→裏ごし→葛と混ぜる→とろ火にかけてかためる という工程を水上さんは丁寧にされています。私は手づくりは断念して日本橋高島屋の明治屋で購入。

 

土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)

土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)